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更年期や性機能についての学術情報、最新研究などを紹介いたします。更年期や性機能についての学術情報、最新研究などを紹介いたします。

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Category:コラム

  • テストステロンと自殺企図の関係

    2012年04月10日


    【 概 要 】

    • 自殺企図のある男性はテストステロン値が低い。そうでない報告もあるが、概ね低い報告が多い。
    • 脳機能、気分、認知機能、攻撃性にテストステロンは深く関わっており、またこれらは自殺衝動に関わる。
    • 他人に対しての攻撃性と自己への攻撃性は、実質的に同じものである。
    • 臨床および疫学的観察では、自殺企図者は暴力犯罪者と性格に共通することが示唆される。
    • 攻撃性と自殺との間に関連性が観察される。

    【 原 著 】

    Testosterone and suicidal behavior.  [ PDF形式 Full Text ]

    Expert Rev Neurother. 2012 Mar;12(3):257-9.

    Leo Sher
    James J Peters Veterans’Administration Medical Center, 130 West KingsbridgeRoad, Bronx, NY 10468, USA and Mount Sinai School of Medicine, NY, USA

    【弊社コメント】
    上記の事実を踏まえ、テストステロンが関与する精神状態をテストステロン補充療法で改善すれば、自殺衝動を防ぐ可能性がある、という論説です。ただし、テストステロンの補充による攻撃性の増加が、自殺行動自体の強化につながる懸念もあり、今後の検討が待たれます。(松)

    テストステロンが生理的な正常範囲から逸脱し、「低過ぎ」あるいは「高過ぎ」いずれの状態にあっても攻撃性が問題になるのではないでしょうか?
    そうであれば、テストステロンの過剰投与は人為的にコントロールできますが、ストレスやLOH症候群で低テストステロン状態にある場合や、大うつ病にある場合も、先ずは低過ぎるテストステロンの血中濃度が生理的な範囲となるように低用量のテストステロン補充をすることで、自殺行動の防止につながることが期待できると考えております。(福)

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  • 第4指(薬指)に対する第2指(人差し指)の比(2D:4D)と学術的能力の関連性

    2011年04月14日


    【 目的・方法 】
    胎生期のアンドロゲンは脳の発達と将来の行動に対して重要な影響を有している。第4指に対する第2指の比(2D:4D)は胎生期のアンドロゲン作用のマーカーであり、長い第4指は高い胎生期アンドロゲン作用を示す。
    2D:4Dはスポーツや投機をする男性の成功を予測している。しかし、学術的能力に対する胎生期アンドロゲンの影響については殆ど分かっていない。
    イタリアのカタニア医学校の男子学生48名の2D4D比に関する研究の所見を報告する。

    【 結果 】
    2D4D比は医学校への入学試験の結果、唾液中テストステロンおよびと攻撃性・積極性と相関していた、しかし大学のコースにおける試験点数とは相関がなかった。

    【 結論 】
    胎生期および誕生後のアンドロゲンは、意思決定およびリスクの許容を求められる状況における遂行能力を高めるが、分析的および計画的能力には影響しない。

    【 原著 】
    Mol Med Report. 2011 May;4(3):471-6..2011.456. Epub 2011 Mar 15.
    The
    second-to-fourth digit ratio correlates with the rate of academic
    performance in medical school students.

    Coco M, Perciavalle V, Maci T,
    Nicoletti F, Di Corrado D, Perciavalle V.
    Department of Physiological
    Sciences, University of Catania, I-95125 Catania, Italy.

    【 弊社コメント 】
    胎児の間に男性ホルモンの影響を強く受けて育った男性は、薬指が長く発達するようです。そして、男性ホルモンがもたらすアグレッシブな精神作用から、意思決定や遂行力が求められる、例えばスポーツ選手や投機ビジネスに向いているようです。個人的にはスポーツや投機に限らず、棋士や起業家、野心的な政治家や管理職など、男性的なアグレッシブさが求められる分野での活躍が期待できると思います。ただし、学力には関係しないようです。思わず、自身の両手を見てしまいました。(福)

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  • 「勃起の硬さスケール」EHS日本語版

    2009年07月10日


    2007年、米国でErection Hardness Score (EHS)が開発されました。0~4の5段階でEDの自己診断に利用する簡便な評価ツールで、信頼性が高いとされています。
    そこで、下記の日本語版EHS「勃起の硬さスケール」が開発されました。

     

    「勃起の硬さスケール」 (日本語版EHS)

    Q.あなたは自分の勃起硬度をどのように評価しますか?

    グレード0: 陰茎は大きくならない。
    グレード1: 陰茎は大きくなるが、硬くはない。
    グレード2: 陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。
    グレード3: 陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。
    グレード4: 陰茎は完全に硬く、硬直している。

     

     


    【出典】
    永尾光一: 日本性機能学会雑誌 : 24(1) 1~3, 2009
    東邦大学医学部泌尿器科学講座
    日本語版 EHS 「勃起の硬さスケール」 の開発

    【弊社コメント】
    多くのカップルにとって、EDは単に「勃起する」「勃起しない」の問題だけでなく、「勃起の質」も重要な問題です。PDE-5阻害剤の先駆者であるファイザー社がシルデナフィル(バイアグラ)の開発を通じて検討して来た評価指標は1997年頃から使用されていますが、その後、欧米はもとより日本の専門医によって評価指標の妥当性が確認され、今や医療の標準的なツールになっています。

    すでにEDの問診票として、IIEF(国際勃起機能スコア)と、その簡易版であるIIEF5という評価ツールが医療の現場で普及していますが、勃起の硬さに絞り込んだ評価ツールが今回のEHSのようです。

    今後、「IIEF5が11点、硬さはグレード3で、途中で2以下になってしまう・・・。」と言って受診するED患者さんが普通になる日が期待されますが、例えば、「グレード2」というタイトルで、中高年男性の悲喜こもごもを描いたドラマがヒットしたら、もっと普及するかも知れません。(福)

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  • アンドロテスト: 性機能障害をともなう男性における性腺機能低下症の問診票の検討

    2009年04月16日


    【目的】
    性機能障害患者における低テストステロン症(総テストステロン< 300 ng/dL)として定義される性腺機能低下症の検出に有用なスコア化された簡便で体系的な質問表の作成を行った。

    【方法】
    最低限の項目が多項目の体系的質問表から、215例のサンプル集団における、性腺機能低下症に対する感度と特異性のROC分析により確認された。

    【測定項目】
    感度と特異性は664例の患者で検証された。PSA、睾丸容積、およびその他の臨床的および心理的パラメーターとテスト・スコアの相関性が妥当性の指標として検討された。

    【結果】

    • 最終的な12項目版( ANDROTEST)のROC分析Figure1.jpg
      閾値をスコア8とした時、低TT(<10.4 nmol/L)に対して感度は76%、特異性は66%、低FT (<37 pmol/L)に対しては感度71%、特異度65%であった。
    • アンドロテストスコアとテスステロン値の関係
      スコアと総および遊離テスステロン値との間に有意な相関が認められた。 (a)総テストステロン r=-0.336, p<0.0001 (b)遊離テストステロン r=-0.402, p<0.0001
      b.jpg
    • 病的な患者(例、スコア>8)は性腺機能低下関連徴候(低睾丸容積、高いうつ症状)の頻度が高かった。
    • 病的なスコア>8とは性腺機能低下関連徴候の関係
      スコア>8では低睾丸容積、高いうつ症状の頻度が高かった。

     

     


    アンドロテスト (ANDROTEST) とは

    性腺機能低下症(性機能障害患者で総テストステロン 300ng/dL以下)のスクリーニングのための質問表。3カ月に1回以上の性交のある患者に適用できる。
    質問表は12項目からなる。質問者は正確な言葉を用い、太字で書かれた質問表で尋ねるべきである。もし必要ならば、患者の回答をはっきりさせるため、通常の字体で書かれた質問表を使用する。患者は各項目ごとに彼自身が用いる言葉で自由に回答できるようにする。
    各項目ごとに、詳細な説明に続き、患者の回答を質問者が0-3のスケールでコード化する。項目のいくつかはイエス/ノーの形式である。
    質問の順序の変更は患者の回答を変化させる可能性があり、示された質問の順序は守らなければならない。

     

     

    • ①年齢

    「何歳ですか?」と尋ねた後、訪問時の患者の年齢を累進スコアでランクする。

    1. 0点: 40歳未満   1点: 40-49歳   2点: 50-59歳   3点: 60歳以上

     

    • ②性的成熟(思春期)に達したのはいつか?
      何歳であなたは性的成熟に達しましたか?

    スクールメイトと同じ時期に思春期を経験しましたか?
    スクールメイトと同じように陰毛や性器の成熟に気付きましたか?

     

    1. スクールメイトと同時期、あるいはそれ以前に性的成熟があれば、ランク0で、
      思春期が遅れていれば、同3となる。
    2. 0点: 9-14歳(正常)   3点: 14歳以降(遅延)

     

    • ③下垂体疾患の病歴があるか?
      下垂体疾患の手術を受けた事がありますか?
      下垂体疾患の薬物療法を行った事がありますか?
    1. 下垂体疾患の病歴がなければ0、
    2. 病歴があれば30点

     

    • ④睾丸停留テストの診断の有無
      睾丸停留の手術を受けた事がありますか?
      睾丸停留の薬物療法を行った事がありますか?
    1. 睾丸停留(片側でも)の病歴がなければスコアは0、病歴があれば3。
    2. 0点: いいえ   3点: はい

     

     

    • ⑤性交中の出来事について
      過去3カ月間の問題点について。勃起しなかった事はどの位の頻度ですか?

    (時々は25%未満、かなり頻繁には25-49%、度々は50-74%、何時もは75%以上。)

    1. 0点: ときどき  1点: かなり頻繁に  2点: たびたび  3点: いつも

     

    1. ⑥勃起で目覚めた事はあるか?
      過去3カ月間にどれくらいの頻度でありますか?以前と同様の頻度で自発的夜間/早朝勃起があればランク0、
      夜間/早朝勃起はあるが以前に比べると、過去3カ月はいくらか少ない場合は1、
      少なくとも50%は少ない場合は2、
      夜間/早朝勃起がない場合は3。0点: はい、規則的にある。
      1点: 過去に比べると少ない。
      2点: 時々あるだけ。
      3点: ない。

     

    1. ⑦過去3カ月間の自慰(マスターベーション)の頻度は?
    2. 0点: 8回/月以上  1点: 3-7回/月  2点: 1-2回/月  3点: なし
    3. 「なし」と回答した場合に質問8.は適用せず、質問8.に対するランクを1として、質問9.へ続く。

     

    1. ⑧自慰中、どのように感じるか?
      上記の質問の後、以下のスコアでランクする。0点: 良い感じ(well)。
      1点: 少し罪悪感を感じる。
      2点: 大きな罪悪感を感じる。
      3点: 非常に大きな罪悪感を感じる。

     

    1. ⑨過去3カ月間、セックスに対する欲求が大きくなったか、小さくなったか?
      過去に比して欲求が増加したか、減少したか?
    2. 欲求が変わらなかったか増加した場合はランク0、
    3. 減少した場合は1。0点欲求が不変または増加した。  
    4. 1点: 欲求が減少した。

     

    1. ⑩射精量の減少に気づいたか?
      射精量の変化に気付かなかった場合はランク0、
      僅かに減少したと感じた場合は1、
      著明に減少した場合は2、
      射精が起きなかった場合は3。
    2. 0点: 不変  1点: わずかに減少した  
    3. 2点: 著明に減少した  3点: 射精が生じない

     

    1. ⑪●過去3カ月間において、性交中に射精あるいはクライマックスに達するのが困難であったか?
      射精に困難さがなかった、あるいはまれなケースとしてパートナーなしで自慰によってのみ射精およびクライマックスが得られる場合は0、
      射精あるいはクライマックスは可能であるが、大きな努力および長時間の性交が必要、あるいは性交中ではなくパートナーの存在下で自慰によってのみ可能な場合は1。
    2. ●挿入あるいはパートナーの手あるいは口での刺激による性交中に射精することが出来ましたか?
    3. 0点: いいえ   1点: はい

     

    1. ⑫体重と身長は?
      体重と身長を質問後、次の計算式によってBMIを算出し、スコアをつける。BMI=体重[kg]/身長の二乗[m2]0点: 25 kg/㎡未満
      1点: 25-29.9 kg/㎡
      2点: 30-34.9 kg/㎡
      3点: 35 kg/㎡以上

     


    【原著】
    Corona G,etal:J Sex Med. 2006 Jul;3(4):706-15.
    Andrology Unit, Department of Clinical Physiopathology, University of Florence, Florence, Italy.
    ANDROTEST: a structured interview for the screening of hypogonadism in patients with sexual dysfunction.

    【弊社コメント】
    性腺機能低下症であることを確認するためには、採血して血中のテストステロン(男性ホルモン)レベルを測定しなくてはなりませんが、採血検査の要否を問診であらかじめ判断するのに有用と思われます。


    尿器科の専門医であれば、テストステロン値の採血検査をためらう事はないと思われますが、むしろ専門医でない医師が患者様の主訴から性腺機能低下症を疑う
    場合や、自分自身の症状から性腺機能低下症を心配している患者様が自己判断する目安として、この問診票が利用できるかも知れません。(福)

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  • 魅力的な男性は女性のテストステロンとコルチゾールの遊離を起こす

    2009年03月29日


    【目的】
    最近、Roney et al. (2007;
    2003)は、男性が若い女性との短い社会的相互作用に反応してテストステロンとコルチゾールが遊離することを示した。
    今回、女性が身体的および行動的に魅力的な男性に反応して同様の内分泌反応を示すかを調査した。

    【方法】
    対象は自然月経サイクルの女性70例および経口避妊薬使用女性50例の計120例。一般的なフィルムから抽出合成した20分間のビデオ4本を視聴させた。4本のビデオのシナリオは次の通りである。

    1. 魅力的な男性が若い女性を誘惑している(実験的刺激)。
    2. 自然のドキュメント(コントロール)。
    3. 魅力的ではない高齢の男性が女性を誘惑している(男性コントロール)。
    4. 魅力的な女性、男性はいない(女性コントロール)。

    ビデオの視聴前後に唾液を採取し、テストステロンとコルチゾールを測定した。

    【結果】

    • 自然月経サイクルの女性において、実験的刺激に反応して、テストステロンおよびコルチゾールが有意に上昇したが、コントロール刺激では上昇がみられなかった。
    • 経口避妊薬使用女性もまた、魅力的な男性に反応して有意なコルチゾールの上昇を示した。

    【結論】
    女性は、高い異性価値のある男性との誘惑的相互作用により、副腎ステロイドホルモンを遊離するであろう。

    【原著】
    Attractive men induce testosterone and cortisol release in women.
    Lopez HH,
    Hay AC, Conklin PH.
    Department of Psychology, Neuroscience Program, Skidmore
    College, 815 N.
    Broadway, Saratoga Springs, NY 12866.

    【弊社コメント】
    テストステロンは、その多くが血中でSHBGと呼ばれる物質と結合していますが、テストステロンはSHBGと結合すると体内で作用しません。一方、SHBGから遊離していて、SHBGに結合していない状態のテストステロンは、フリーテストステロン(遊離テストステロン)と呼ばれています。体内で活性をもって作用している男性ホルモンは、フリーテストステロンなのです。

    この論文によると、男女のいずれも魅力的な異性を意識することで、テストステロンの遊離を起こすということですから、すなわち生理活性のあるフリーテストステロンが増えるわけです。すなわち、快活で積極的、アグレッシブで昂ぶった気持ちになり、性欲が高まる・・・といった、異性を意識した時のワクワク感を思い出すことになり、日々このような状態を続けることで、アンチエイジングや若返りが期待できると思います。

    恋愛小説を読んだり、ラブシーンのあるドラマや映画を観たり、あるいは好きな異性の芸能人のファンになって心をときめかすことで異性を意識することも、体内のテストステロンを遊離させて生理活性のある状態にするという意味では、アンチエイジングや更年期障害の緩和、性機能の維持回復・・・、といった観点から意義のある生活習慣なのかも知れません。

    例えば作家の渡辺淳一氏は、著作やコメントを通じて中高年の恋愛を勧めていますが、異性を意識する行動が男性ホルモンを遊離させることで、中高年層のアンチエイジングや回春につながる、というメカニズムが示唆されると思いました。(福)

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  • 早漏に対するSSRI使用への警鐘

    2009年03月10日


    2009年2月21日に第19回・日本性機能学会東部総会が長野市で開催され、総合せき損センター・泌尿器科の木元康介先生から表題の発表がありました。
    近年のSSRI服用にともなう様々な有害事象(重大事件に至るほどの攻撃性・自殺念慮・精子に与える影響)の指摘をはじめ、早漏の治療に対するSSRI(選択的セロトニン再吸収阻害剤)の使用が適応外であることも踏まえると、これらのリスクに対応するためには、処方に至るプロセス(患者とパートナーに対する説明と了解)や、処方後の注意深い問診など、極めて慎重な対応が必要である、という趣旨でした。

    Antidepressant-associated changes in semen parameters.
    Tanrikut C, Schlegel PN.

    James Buchanan Brady Foundation, Department of Urology, New York-Presbyterian Hospital/Weill Medical College of Cornell University, New York, New York 10021, USA.

    We describe 2 cases of patients referred for evaluation of male infertility who had antidepressant medication-associated changes in sperm motility and/or concentration. The physical examination and endocrinologic study findings were unremarkable in each case. Analysis of the initial semen specimens revealed oligospermia, impaired motility, and abnormal morphology in each patient while they were taking serotonin reuptake inhibitors. Repeat semen analyses performed 1 to 2 months after discontinuation of the antidepressants demonstrated marked improvements in sperm concentration and motility. Additional assessment of the potential impact of antidepressant medications on male fertility is warranted.
    PMID: 17270655 [PubMed – indexed for MEDLINE]


    Antidepressants and Violence: Problems at the Interface of Medicine and Law

    David Healy, Andrew Herxheimer, and David B Menkes
    PLoS Med. 2006 September; 3(9): e372. Published online 2006 September 12. doi: 10.1371/journal.pmed.0030372.
    PMCID: PMC1564177
    PDF形式はこちら

    「うつ病」内科で薬処方 使い方誤り攻撃性増す?
    2009年3月14日 20時51分   ( 2009年3月14日 20時51分更新 )

    副作用が少ないと人気の抗うつ薬SSRIを服用し、暴力などの攻撃性が高まった疑いもある症例が4年半で42件報告されていたことが分かった。厚労省では、初期症状の患者らが精神科を敬遠して内科にかかり、使い方を誤って逆に副作用が強く出た可能性もあるとみている。うつ病患者が社会から誤解を持たれないためにも、抜本的な対策が求められそうだ。

    副作用少ないSSRI、「攻撃性」疑い42件も
       うつ病の初期のころは、精神科へ行くのに抵抗がある人は多い。自覚症状がなく、動悸がするなどの体の異常を訴える場合もある。そして、まず内科にかかることになる。
    そこでは、パキシルなどの「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」が使われることが多い。効果的な抗うつ薬として一般的な「三環系」と違って副作用がきつくなく、仕事や家事をしてもらいながら治療できるため、使いやすいからだ。
    ところが、そのSSRIにも、攻撃性を増したりするような副作用が出る可能性があることが分かった。SSRIは、日本では、シェア5割のパキシルのほか、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフトの計4製品がある。それらの製造販売元の各製薬会社は、医師からの副作用報告を医薬品医療機器総合機構に上げており、それが2008年秋までの4年半に、前述のような副作用も疑われる症例が42件もあったというのだ。
    これは、業界紙の医薬経済社が08年9月に同機構に情報公開請求した結果、同12月に公開され、09年3月に入って同紙がその内容を報じたものだ。
    それによると、人を実際に傷つけ刑事事件にもなったケースが6件あり、うち1件は妻を殺害したものだった。殺害したのは、認知症にもかかっていた70歳代の男性で、パキシル服用後のことだった。ほかに、妻の頭を金属類で殴って重傷を負わせた45歳の男性もいた。
    傷つけるまではいかなくても、その恐れがあったのが13件。「このままでは人を殺してしまう。刑務所に入れてくれ」と望んだ男子高校生やバイクを蹴ったりする人もいた。残る23件は、興奮してイライラするなどしたケースだった。

    気分が上がってくるときの服用は危険
       SSRIは、1999年に日本で承認され、パキシルは2000年から発売された。今では、100万人以上が使うほどSSRIがポピュラーになったが、副作用が少ないというのは間違っていたのか。
    この疑問に対し、厚労省医薬食品局の安全対策課長は、こう説明する。
    「うつ病の方は、いつも沈んでいるわけではなく、波があって、気分が上がってくるときがあります。そのような状態でSSRIを服用すると、気分を増幅させる危険があるのです。そして、半端ではない興奮状態になったり、怒りっぽくなったり、ときには人を傷つけたりするかもしれません。また、自殺リスクが上がることもありえます」
    つまり、精神状態を見て使わないと、意外な副作用が出てくるということだ。
    古典的な三環系は、使い方が難しいので、扱いに慣れている精神科の専門医が処方する場合がほとんど。ところが、SSRIは、副作用がきつくないので、内科医でも処方され、十分な注意喚起がないまま、気分が上がってくるときに使われている恐れがあるというのだ。
    ただ、うつ病患者は、薬を服用しなくても、気分が上向いているときなどに攻撃的になることがあるとされる。服用しなければ、自殺の危険も強い。従って、他害行為や自殺を防ぐためにも、投薬治療は必要だ。大切なのは、SSRIは、前述のように使い方を誤ると、副作用として「攻撃的反応」を増幅させると注意喚起することのようだ。

    厚労省は、どのように対応するのか。

    これに対し、前出の安全対策課長は、こう説明する。
    「確かに、怖くなって薬を飲むのを止めたり、うつ病患者は危ないと思う人が出たりすると、害が大きいと思います。本来なら、精神科の専門医によく聞くのが大切でしょう。しかし、抵抗がある人もいて、呼びかけだけでは難しいと思っています。そこで、内科医などにも人を傷つけるような副作用の可能性があることを注意喚起してもらうよう、何らかの対策を検討しています」

    抗うつ薬で暴力など42件  厚労省が因果関係調査
    2009/03/07 12:31   【共同通信】

    抗うつ薬の「パキシル」など4種類のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を服用した患者に、他人に暴力をふるうなど攻撃性が高まる症状が表れたとの報告が2004年から昨年秋までに計42件、医薬品医療機器総合機構に寄せられ、厚生労働省は7日までに、因果関係の調査を始めた。
    メーカー側に見解を求めるとともに近く専門家の意見も聞き、攻撃性についての注意書きを盛り込む方向で、添付文書の改訂を指示することを検討する。
    厚労省によると、報告があったのはパキシル、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフトの4社4製品。42件のうち「人を殺したくなった」など他人を傷つける恐れのある言動をしたり、実際に暴力をふるったりした症例が19件。残る23件も、興奮して落ち着きがなくなるなどの症状が表れたという。
    因果関係は不明だが、うつ病を併発した認知症の70代の男性がパキシル服用後に妻を殺害するなど、刑事事件に発展したケースもあった。
    SSRIは、脳内の神経伝達物質セロトニンの濃度を調節して神経の活動を高める薬。三環系と呼ばれる従来の抗うつ薬よりも副作用が少なく、うつ病治療に広く使われており、国内でも推定で100万人以上が使用しているとみられる。
    厚労省は「うつ病以外の患者にも使われていなかったかなど慎重に調べたい」としている。

    「抗うつ薬で攻撃性」副作用の疑い42件 厚労省調査
    2009年3月7日6時16分 【asahi.com】

    銃乱射で客ら8人死亡  米中西部の商業モール
    2007/12/06 01:45   【共同通信】

    【ロサンゼルス5日共同】米中西部ネブラスカ州オマハのショッピングモールで5日午後2時(日本時間6日午前5時)ごろ、若い男がライフル銃を乱射した。地元警察当局によると、クリスマスの買い物などに来ていた客ら8人が死亡、重体2人を含む計5人が負傷した。犯人の男は自殺した。 米国では4月のバージニア工科大事件をはじめ銃乱射事件が続発、一般市民が犠牲になる惨事が繰り返されている。 地元テレビによると、犯人は近くに住む20歳で、自宅に今回の犯行をほのめかすメモが残っていた。11月にアルコール所持容疑などで逮捕され、今月19日に裁判所に出廷する予定だったという。 知人とみられる地元女性は地元テレビに、男が最近職場を解雇され、銃を持っているのも見たと語った。別の友人男性は男が抗うつ剤を服用していたと話した。警察当局は詳しい動機を調べている。

    全抗うつ剤にリスク記載へ  若者の自殺企図で厚労省
    2007/11/06 21:11   【共同通信】

    厚生労働省は7日までに、国内で販売されているすべての抗うつ剤に、「24歳以下の患者で自殺を企てるなどのリスクが増加するとの報告がある」との内容を使用上の注意として記載するよう、製薬会社に添付文書の改訂を指示した。 米食品医薬品局(FDA)が今年5月、米国内で同様の改訂を指示したのを受けた措置。 ただ抗うつ薬によるメリットも大きく、今回の改訂では、プラス面とマイナス面を考慮した上で投与するよう記載する。 対象となるのは、新しい世代の抗うつ剤であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)のほか、古くから使用されている「三環系」「四環系」と呼ばれる種類も含むすべての抗うつ剤。

    大人でも自殺衝動を増加か  抗うつ剤、米当局が警告
    2005/07/02 01:36   【共同通信】

    【ワシントン1日共同】米食品医薬品局(FDA)は1日、抗うつ剤が大人の自殺衝動を強める可能性が最近の複数の研究で指摘されたとして、服用する際は症状の悪化や自殺傾向などを慎重に監視するよう求める警告を発表した。  一部の抗うつ剤が子供の自殺傾向を強める恐れは既に明らかになっており、FDAは昨年、薬の添付文書に強い警告を表示するよう指示した。  FDAは今後約1年かけ、米国で広く処方されている抗うつ剤について大人の患者に自殺を誘発する恐れの有無を評価し、製品への警告表示などを検討する。  今回の警告は、その結論が出るまでの当面の措置。特に抗うつ剤を初めて服用する際や、有効成分の量が変わった時の体調、精神状態の変化に注意し、自殺を考える回数が増えたなどの変化があれば医師の診察を受けるよう求めた。

    機長刺殺の男に無期懲役  全日空機ハイジャック事件
    2005/03/23 03:11   【共同通信】

    1999年、全日空機を乗っ取り機長を刺殺したとして、殺人とハイジャック防止法違反(ハイジャック致死)などの罪に問われた無職西沢裕司被告(34)に、東京地裁は23日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。  判決理由で安井久治裁判長は「わが国犯罪史上類を見ない危険かつ悪質なハイジャック事案で、航空機の安全な航行に対する社会的信頼を損なった」と厳しく指摘した。  ハイジャック致死罪が初めて適用された事件。動機と責任能力が争点となったが、安井裁判長は「抗うつ剤などの影響により、犯行当時、そう状態とうつ状態の混合状態で、心神耗弱の状態にあった」と認定した。  公判中、2回行われた精神鑑定のうち1回は「心神耗弱状態だった」と結論付けていた。

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  • 入浴習慣が男性不妊の一因に?

    2007年03月06日


    医学情報関連のデータベース「Bio Today」の記事によりますと、

    ・ 体温よりも高い温度の風呂
    ・ 30分/週以上
    ・ それが3回/月以上

    で定義された「湿性温熱(wet heat)」の男性11人を対象に、このようなお風呂の入り方を3~6ヶ月やめると、運動性の精子の数が平均で491%上昇したという話です。

    精子は精巣の中にある精細管で作られますが、古来より「陰嚢を冷やせ」という「金冷法」の養生訓があるように、精子の産生機能は高温に弱く、体温よりも低くないとうまく進まないと言われていますし、そのために陰嚢は冷却しやすい形(タマとして薄皮の袋に入った状態で股間にぶら下がっている)になっているのでしょうから、調査結果を精子の産生メカニズムに照らして考えれば、確かにそうなのかも知れません。

    本報は海外の学術雑誌(International Braz J Urol誌)によるものですから、じっくりお風呂に浸からずにシャワーで済ませる欧米人の習慣がベースなのだろうと思いますが、それにしても上記の湿性温熱の定義であれば、日本的な入浴習慣で言えば大多数の日本人は入浴習慣のせいで精子が少なくなっている…という話になってしまいます。しかも、お風呂上りで性行為を行う日本人は多いでしょうから、本報は日本の入浴習慣が日本男性の精子にとって過酷な環境である事を示唆します。

    何はともあれ「イキの良い」精子が少なくて男性不妊、とお悩みの人は、半年ほどお風呂に浸かるのをやめてシャワーだけで済ませるようにした後に、精子検査をしてみる事も考慮すべきなのかも知れませんし、子作りを視野に入れた性行為の前はシャワーだけで済ませて、ゆっくりお風呂につかるのは性行為の後にする方が良さそうです。

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    私の健康法「PPK健康術」

    2006年04月22日


    弊社顧問・福井靖彦が、平成13年1月に甲府商工会議所平成相生会で講演致しました健康法を、このほど加筆修正して掲載致しました。


    私の健康法「PPK健康術」

     私は66歳の男です。健康です。仕事は前半生を洋酒業界で過ごし、後半生を性ホルモンを扱う製薬業界で過ごしました。いつも実験屋のモルモットで通して来ました。女房に言わせると「戌年だから何でも匂いを嗅いで、舐める」のが癖だそうです。
     30代は洋酒を飲み過ぎましてギックリ腰で苦しみました。整形外科、指圧、マッサージの世話になりましたが、治りませんでした。50代に、幸運にも中国医学の名人に診て戴く機会を得まして、目から鱗が取れました。 「自然」「気」「未病」という概念を改めて信じるようになりました。ギックリ腰はカイロ治療と瞑想で治りました。仕事時代は仕事を、今は健康を達成目標にして楽しんでいます。
     この度は、ここ十数年来の私の健康術についてお話することでご勘弁戴きたい訳ですが、厄介なことに健康の目標を達成するには医療、介護、年金の社会保障制度が関わってきます。

    〔1〕 新年の景気と医療、介護、年金の社会保障制度
     21世紀になりました。新年早々、株価と為替で景気は大揺れです。
     株価が1万5千円から2万円をうかがう景気ならば、一般大衆は当局を信用しないなりにも、まぁ気に懸けないことで済ませて来ました。ところが1万3千円以下となりますと、銀行生保の保有株が含み損になって、また税金注入…といった事態になりますので、大揺れな訳です。
     案の定(?)、「財政再建の鍵である医療費抑制~高齢者医療費負担制度見直しを柱とする社会保障制度の抜本改革を2002年度に実施する、という政府の約束を先送りしたい」、という 関係者の談話が日本経済新聞で報道されました。
     当局に解決策が無い理由は、私たち大衆が肌で感じ取っています。ですから、私たちは自ずと自己防衛上、次の二つを実行する訳です。

     ① 今の制度を信用していないから、倹約して貯金する。
     ② 今の医療を信用していないから、自分流の健康術を身に着ける。

     かくして消費者の財布の紐がいっこうに緩まぬ一方で、健康ブームはいっそう盛んになりました。 いま私がお話申し上げているご縁も、その流れと存じます。 様々な健康術を紹介するテレビ番組や雑誌の記事は盛り上がっていますし、多様な健康食品も賑やかに出回っております。

    〔2〕 今の医療は、何故おカネがかかり過ぎるのか?
     今の医療体制 ― 健康保険業、医者、薬業 ― にとって、顧客は「病人」でなければなりません。 突き詰めれば、これが理由だと考えています。
     今の体制では、人が「病気」と認定されて、初めておカネが廻り出す仕組みです。そして、高額な最新の薬とハイテクを駆使する重病・難病・奇病ほど売上を伸ばせる訳です。これは、医療関係者の人格倫理というより、病気を治さないとおカネにならない、という制度の問題と考えます。
     もちろん、罹ってしまった病気は早期に発見し、質の高い、信頼できる医療によって、速やかに治すべきですし、今後いっそう充実させて行くことが必要です。これについては、医師である弊社会長の梶原優が、私たちの視点に立って制度の改革と充実に鋭意取り組んでおります。

    〔3〕 「予防」が大切。 そして、予防は個人の愉しみ。
     医療費を抑制するには「私たちが病気にならないこと」です。すなわち病気を「予防」して、健康維持をはかることに尽きます。定期検診や人間ドックは仕方ないにしろ、出来ることなら生涯、病院で治療を受けるようなことにはなりたくない、と考えるのは、私だけでなく皆さんも同じと存じます。ですから予防による健康維持は、少なくとも私たちと国の財政にとってはハッピーなことです。
     ところが「予防」というのは今の制度ですと医療関係者の売上に貢献できません。そもそも今の制度の恩恵にあずかっている多くの既得権者にしてみれば利害が衝突します。ですから予防を説く声は大きくとも、なかなか現実味を帯びて来ません。結局、予防は今のところ個人が趣味道楽として愉しむほかありません。

    〔4〕 今の医療に「加齢」を「治療」してもらいたいですか?
     西洋医学は20世紀初めまでの感染症が人類の中心課題だった時代に大きな貢献をしました。そして、今の医療制度はその成功体験に基づいて作られたものです。西洋医学の進歩により、日本人の寿命は確かに延びました。 今や私たちが日常の健康で心配することと言えば、ペストや結核ではなく高齢者の「加齢」と言えましょう。ところが感染症は病気ですが、加齢は病気とは言えません。ですから、今の医療体制が加齢に取り組むためには、加齢を病気として処理することになります。
     そのために、例えば更年期の症状を細かく分けて、個々に病名を付ける訳です。そして、これらについて対症療法する、あるいは遺伝子技術を駆使して人間の部品交換をする…というのが「治療」になります。これは、とてもハイテクで未来的です。こういうテクノロジーに従事する人たちの間では、莫大なおカネが廻ることになりましょう。景気の活性化につながるかも知れません。
     しかしながら、これらは高コストになることが容易に想像できます。そもそも、このようなハイテクで多額のカネを注いで「生かされること」だけが、人生の満足になるのでしょうか?私たち高齢者が元気になり、そして元気に過ごし続けるために、もっと味わい深くて人間らしい方法があるのでは無いでしょうか?

    〔5〕 代替療法の世界
     予防と言えば、東洋医学は予防を中心に据えているようです。東洋医学は、かつて人々の命を脅かした感染症を西洋医学のように切れ味鋭く退治してくれはしなかったので、西洋医学の実績の前に軽んじられて来た感があります。しかし、今の医療制度が少なくともコスト面の限界を迎えており、しかも病気を治すプロセスを踏まざるを得ないことを考えると、東洋医学は私にとって必要な選択肢になっているのです。
     私の場合、30~50代に至る20年以上もの間苦しんだギックリ腰は、最初に申し上げた中国医学の先生の啓示で「気」を心から信じることが出来たため、治りました。以来、信じてカイロを受け、信じて瞑想を楽しんでいます。
     「気」については、ある気学の勉強会に参加して、仲間と気学を楽しんで参りました。気を信じる健康法は、数千年来、民間伝承として世界各地で伝わって来た療法で、沢山あります。
     アメリカでの流行り言葉を使えば「代替療法」です。最近、代替療法が米国で市民権を得始めています。理由は単純で、現代医学による通常の医療が、代替医療に比べて60倍のコストがかかっており、その割に効果が低いと見なされているからです。そのように考える米国の金持ちのインテリ層が代替医療に満足し始めているようです。例えば栄養療法、ハーブ療法、ホメオパシー、瞑想法、カイロプラクティス、鍼灸、アーユルヴェーダ、中国医学、ストレス軽減療法等が知られています。
     低コストで治る症例が続出する割に、代替療法を日陰者として閉じ込めようとする政治勢力が今の処上回っています。そのような状況のなかクリントン前大統領よりも、ヒラリーさんが有名ですが、彼女の政策課題は医療費増大の解決策でした。
     いかにもアメリカらしく、あらゆる可能性が極めて実直に検討されて来た訳ですが、「代替療法を科学的な根拠(エビデンス;evidence)に基づき改めて評価すべきだ」と言う声も挙がって来ました。そのために、NIH(National Institute of Health ;米国国立衛生研究所)は、1991年にOAM(Office of Alternative Medicine ; 代替医療部門)を設立したのです。
     一方で政治的な背景から、AMA(アメリカ医師会)と FDA(米国食品医薬品局)は代替療法に対して批判的姿勢を取り続けています。NIHを中心とする研究者の研究結果と世論の動向を眺めているところなのでしょう。
     日本では「生活習慣病」と言う言葉を新聞雑誌で見かけるようになりました。この言葉は医学用語の辞典では見かけませんので、行政用語なのでしょう。先ほど財政再建の鍵である「社会保障制度の抜本改革を2002年度に実施する政府約束を先送りしたい」と言う談話を紹介しましたが、行政は世論の熟し方を眺め中なのでしょう。代替療法のマーケットは米国に比べますと未熟ですから、別の切口を使いたいのかも知れません。厚生省の「健康日本21」の基本計画を受けて、山梨県も4月から「健康山梨21」の準備中です。恐らく食事と運動の生活習慣改善を目標にした草の根運動を盛り上げることになるだろうと思っています。
     厚生省「健康日本21」基本計画のキーワードは「健康寿命」です。冒頭に怪しげな「PPK」健康術という副題をつけましたが、「PPK」とは「ピン・ピン・コロリ」のことです。「健康寿命」のことですが、ウケていただけましたか…?今はインターネットのお陰でタダ同然で欧米の情報が得られます。インターネットで見ていますと、代替医療実践医師の症例やNIHの報告をはじめ、日本で代替医療を理解する医師、健康ジャーナリスト、脳神経内分泌免疫の先端研究者からの メッセージを知ることが出来ます。これらが21世紀の健康を予言してくれて、楽しくてわくわくします。

    〔6〕 健康維持は、自分のため
     自分の健康を維持すれば、医療費の削減にささやかな貢献をすることでしょう。しかし、何はともあれ「健康維持は自分のため」です。そして、感染症や怪我は別ですが「生活習慣や加齢に関わる健康は、あくまで自分のために自分で行う自立」だと信じています。
     ここで、健康の成否は 「信じること」が絶対条件であると思っています。先ほど「気学」の勉強会のことを申しましたが、勉強会の仲間で身体を壊した人がいます。勉強家で知識は随一です。でも、失礼ながら実践の深みが物足りなかった…。分かれ目は「信じること」が足りなかった、と感じました。
     先ずは「隗より始めよ」。ということで、私自身は、これまでに培ってきた「実験屋のモルモット」で通したいと思っています。自分自身のために、手近なところから、様々な健康法を私のやり方で試してみて、本当に信じられるかどうかを自分で判断する訳です。医師のアドバイスや検査データですら、私自身の判断材料の一つに過ぎません。これが私にとっての「自立」なのです。
     そして、いま私は年より元気で若いと勝手に思っています。50代にあった老人のシミが消えました。眼鏡は近眼・乱視・老眼で、少なくとも二つ要りましたが、今は無用です。洋酒屋時代に良く飲んだ酒ですが、今は飲みたくもなく、飲めなくなりました。煙草は勿論吸っていません。食性も変わりました。野菜・果物・米の飯、そして魚が食べたい。おいしいからです。おかげさまで、おカネのかからない暮らしになりました。

    〔7〕 健康法・成功のコツ
     代替医療を実践した結果については、日本ですと医師の症例報告をに基づいたメッセージが未だ少ないようなので、米国の医師の症例を調べました。これらについて、僅かな私なりの経験の目で読みますと、成功のコツが見える気がするのです。

    (1) 信じること
     信じる動機やきっかけは、人によって様々です。仕事や身体のことで死ぬ程苦しんだ、周りに良き智者友人に出会えた、本を広く深く読んだ…。私の場合、中国医学の名人、気学の仲間、マハリシ・アーユルヴェーダの会、そして「気」に関わる世界の名著でした。

    (2) チェック方法
     加齢と生活習慣の健康法には速効性がありません。そうは申しましても何か実感や指標が無いと、根気も続きませんし、楽しくありません。そこで、私は長続きさせるために、次のようなチェック方法を役立てています。

     ① 食べること: 空腹感。 生活習慣病予防検診のデータ。
     ② 運 動  : 排泄実感。 大小便、鼻水の感覚。
     ③ 瞑 想  : 楽しいという感覚。 排泄実感。 耳垢、鼻水、舌苔。

     排泄実感は加齢と生活習慣の健康法では特に大事です。東洋医学と西洋医学を分けた哲学の違いとも言えましょう。すなわち西洋医学が摂取を健康法の柱に据えているのに対して、東洋医学は排泄を重視しているのです。

    (3) 知識
     実践第一ですが、動機づけには知識も要ります。私が健康で自立しているために、大事にしていることを、二つ挙げます。

     ① 生理機能を知ること
     ひとつは、生命そのものの宿命に関することです。神が人間の生命に授けてくれた中心機能は二つで、ひとつは種族保存のための生殖、もうひとつは自分が生きるための適応代謝です。機能の正常運転は脳中心の情報網 ― 身体の「IT」です ― が担当します。
     多種の情報は「ホルモン」と言う、多種の化学物質が担当します。適応代謝に関わるホルモンは加齢しても変化量が少ないのですが、生殖、つまり性ホルモンは男女とも加齢と共に量が激減します。「お疲れ様でした」という次第なわけです。
     ところが、この性ホルモンは「男のバイタリティー」あるいは「女らしさ」そのものを支配しています。加齢とともに激減したままでは、「PPK」は無理です。
     私の場合、日本性機能学界・理事長の白井将文先生に相談して、テストステロンの補充を受けています。 食事・運動・瞑想だけでは実感出来ない、奥底からの生命力を実感しています。

     ② 食事について
     もうひとつは、生活環境との関わりで生じた問題です。米国で代替医療を実践している医師の症例を見ておりますと、米国で彼らが推奨している理想的食事というのは、かつて私たちが昭和30年代までに食した、典型的な日本食です。
     現代の食生活は、肉食とジャンクフードの脂が多過ぎるわけですが、かと言って、野菜、果物、穀類、魚に切り替えようとしても、現実的には生活環境との関わりがありますので、もはや日本も含めて理想的な食生活を続けることは極めて困難との見方があるようです。
     そこで、サプリメントの考えと実践がある訳です。状況に応じて ビタミンやミネラルをサプリメントで摂取しております。

    以上、駆け足で申し上げましたが「PPK健康術」にご賛同戴ければ幸いです。

    (平成13年1月・甲府商工会議所平成相生会 1月例会)

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