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更年期や性機能についての学術情報、最新研究などを紹介いたします。更年期や性機能についての学術情報、最新研究などを紹介いたします。

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Category:エストロゲンと脂肪・筋肉

  • 性ホルモンと筋肉の脆弱化

    2013年05月14日


    【 概 要 】
    ヒトの老化は内分泌機能の低下を伴っており、性ホルモンの産生低下が特徴である。 現在の研究結果は低性ホルモンがサルコペニアおよび筋肉の脆弱化の機序のキーとなっていることを示している。 欧州の大規模研究プロジェクトMYOAGEにおいて、筋肉量および機能の年齢に関連した喪失の原因として性ホルモン、テストステロンおよびエストロゲンの役割がさらに研究されている。

    女性のHRTは加齢に関連した筋肉の喪失、速筋機能(パワー)の喪失および骨格筋における脂肪の蓄積を抑える。 さらに、HRTは抵抗運動後の骨格筋の蛋白合成率を高め、骨格筋および腱、両者の結合組織にアナエロビック効果を有し、マトリック構造および機械的特性に影響している。

    HRTは細胞骨格、細胞マトリックス蛋白等の遺伝子発現に影響し、IGF-Iに対する刺激作用およびIL-6およびアディポカイン調整における役割を有している。

    血中ホルモンレベルは低いが、閉経女性は骨格筋において局所的高濃度のステロイド合成酵素を持っている。

    【 原 著 】
    Biogerontology. 2013 May 1.
    Sex hormones and skeletal muscle weakness.
    Sipila S, Narici M, Kjaer M, Pollanen E, Atkinson RA, Hansen M, Kovanen V.
    Gerontology Research Centre, Department of Health Sciences, University of Jyvaskyla, Jyvaskyla, Finland

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  • エストロゲン製剤とグレープフルーツの相互作用について

    2009年05月13日


    エストロゲンを配合した医薬品と、グレープフルーツの相互作用を示唆する症例報告がありましたので、ご紹介致します。

    血中エストロゲンの高い状態が続きますと、血栓症のリスクが高まるという指摘がありますが、グレープフルーツを食べ続けたことでエストロゲンの代謝が阻害された結果、血中エストロゲン濃度が高くなってしまったと考えられているようです。

    本報は経口避妊薬とグレープフルーツの事例で、グレープフルーツを食べ続ける極端なダイエット、長時間の運転(いわゆるエコノミー症候群と似た状況)といった、血栓症を生じやすい極端な状況があったと考えられますが、経口避妊薬だけでなく、エストロゲンを配合した他の医薬品(弊社製品では「ヒメロス」「バストミン」)でも注意が必要と思われます。

    具体的には、女性ホルモン剤を使用中の人はグレープフルーツの摂取をなるべく避けるのが無難で、少なくとも毎日食べ続けないように(2~3日空ける)すべきと言われています。

    相互作用の影響を解除するには、グレープフルーツの摂取を2~3日空けた方がよいとの考え方が示されています(独立行政法人 国立健康・栄養研究所HPより)

    また、グレープフルーツの成分が肝臓で薬物を代謝する酵素を阻害し、その結果、薬物が代謝されず血中濃度が上がり過ぎてしまうために生じる問題は、他にも多々指摘されていますので、女性ホルモン剤に限らず、何か薬を使用中の人がグレープフルーツを食べる際は、事前に薬剤師へ相談いただくのが万全です。

    女性ホルモン剤をはじめ、何か医薬品を使用中の女性がグレープフルーツでダイエットをするのは注意が必要で、他のダイエット方法を検討する方が無難と思われます。

     

    【経過】
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    才、女性。グレープフルーツによるダイエットを実践したところ、足に深部静脈血栓を発症した。

    健康だったが少し太っていたためダイエットをしようと思い、3日前から毎朝グレープフルーツを225g食べることを含むクラッシュダイエット(極端な食事制限)を始めた。前日に車を運転していて、腰から左足かかとにかけて痛みを感じ、次の日には左足が紫色になった。

    超音波診断の結果、彼女の左足の静脈には大きな血栓があり、腰からふくらはぎにかけて広がっていた。彼女には遺伝的に血栓ができやすいこと、経口避妊薬を飲んでいたこと、長時間ドライブしたことなどのリスク増加要因があり、3日間グレープフルーツを食べたことで血中エストロゲン濃度が増加し、バランスが崩れたものと考えられる。

    この事例はまれなものであるが、極端なダイエット方法は予想できない結果をもたらすことがあるので避けるべきである。彼女が使用していた薬は、レボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)4年、ドロスピレノン(黄体ホルモン)とエチニルエストラジオール(卵胞ホルモン/エストロゲン)の低用量経口避妊薬が1年。煙草は吸わず、酒も滅多に飲まない。

    ヘパリン静注とtPAのカテーテル導入による血栓溶解治療後ステント挿入。退院後も抗血液凝固剤を処方して、経口避妊薬は中止。20092月現在、回復した。

     

    【作用機序】
    Wikipedia
    グレープフルーツ」(薬との相互作用)参照。

    ※フラノクマリン類:ベルガモチンやジヒドロキシベルガモチン。
    ベルガモチンはグレープフルーツの果肉や果皮に含まれ、脂肪細胞に働きかけて、アディポネクチンというタンパク質の分泌を高めると考えられている。

    独立行政法人 国立健康・栄養研究所HPより
    グレープフルーツと薬物の相互作用について(Ver.090129)

    グレープフルーツの影響はCYP3A4で代謝を受ける薬物で認められ、その作用機序は次のように考えられています。

     代謝を受けやすい薬物は、本来ならば小腸上皮細胞に存在する薬物代謝酵素CYP3A4によってある程度代謝を受け不活性化されるため、循環血液中に入る薬物量が少なくなります。しかし、グレープフルーツ中のフラノクマリン類がCYP3A4を阻害すると、薬物が不活性化されないため、循環血液中に入る薬物量は多くなり、その結果として体内濃度の指標となるAUCCmaxが大幅に増加し、結果として薬物が効きすぎてしまう状況になります。グレープフルーツジュース200mL 程度の摂取でもカルシウム拮抗薬(フェロジピン、ニソルジピン)の効果が増強されるとの報告があります。また、グレープフルーツの薬物に対する相互作用は長く持続し、長いものでは3-7日間持続するとの報告もあります。そのため相互作用の影響を解除するには、グレープフルーツの摂取を23日空けた方がよいとの考え方も示されています。

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  • エストロゲンは中心脂肪を減らす

    2006年08月19日


    【目的】
    若い女性の体組成とレプチンに及ぼすエストロゲン欠乏と運動の影響を検討する。

    レプチン: 脂肪細胞から分泌され、食欲の抑制やエネルギー代謝の増大を介して体脂肪量の調節、飢餓への適応をつかさどるホルモン。

    【方法】
    デザイン:横断的臨床研究
    対象:年齢及びBMIがマッチした3群。
    ① 正常体重で運動、無月経の女性
    ② 規則的な月経周期で運動する女性
    ③ 規則的な月経周期で活動的な女性

    介入:採血、体脂肪の測定、二重エネルギーX 線吸収装置による脂肪分布の測定。
    主要なアウトカム:中心脂肪の蓄積(四肢に対する体幹脂肪の比)、血清E2およびレプチン濃度。

    【結果】
    規則的な月経周期の女性では血清E2と四肢に対する体幹脂肪の比の間にマイナスの相関関係を認め、これは年齢、運動、体脂肪、血清テストステロンとは独立していた。しかし、無月経の女性ではこの関係は認められなかった。
    全体で、レプチンに対して、E2はプラスの、運動はマイナスの相関性を示し、これは体脂肪とは独立していた。

    【結論】
    規則的な月経周期をもつ若い女性において、E2は中心脂肪の蓄積と逆の相関性を示す。全体の若い閉経前の女性においては、エストロゲンは体脂肪とは独立してレプチン濃度に影響している。

    【原著】
    Estrogen and exercise may be related to body fat distribution and leptin in young women.
    Puder JJ, Fertil Steril. 2006 Jun 27;

    【弊社コメント】
    E2が高いと中心脂肪が減るのは、レプチンの増加が関係しているかもしれません。そう考えれば閉経後の女性の変化も筋が通ります。(野)
    規則的な月経周期の若い女性が、月経を終えて2週間後のエストロゲンの分泌が旺盛になる頃に、心なしかボディ・シルエットがいつも以上に美しくなるとすれば、中心脂肪が減っているということなのかも知れません。(福)

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