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Category:前立腺腫瘍・前立腺肥大

  • テストステロンの使用は前立腺癌の発症と関連しない

    2013年05月29日


    【 目的 】
    前立腺癌を発症した男性のテストステロン補充療法の使用状況およびその影響を調査した。

    【 方法 】
    Surveillance, Epidemiology, and End Results-Medicareデータにリンクし、1992~2007年に前立腺癌と診断された149,354例の男性を同定した。このうち 2,237例(1.5%) が前立腺癌の診断前にテストステロン補充療法を行っていた。傾向スコア法を用いテストステロン補充療法 vs 非補充療法の癌の転帰を評価した。

    【 結果 】

    • テストステロン補充は癌診断時の高齢、非白人および多数の合併症の存在と関連していた(P <.001)。
    • 前立腺癌診断前の非テストステロンvsテストステロンは腫瘍のグレード(34% vs 30%, P <.0001) および T4(6.5% vs 4.3%, P <.0001)に有意差が認められた。
    • 死亡率は前立腺癌診断前年の≧2 PSAの男性で低かった。
    • 全体の生存率、癌患者の生存率、あるいはアンドロゲン枯渇療法の使用は群間で有意差がなかった。

    【 結論 】
    この観察研究期間にけるテストステロンの使用頻度は低かった。テストステロンは悪性前立腺癌とは関連がなく、全体あるいは疾患特異的死亡率に影響していなかった。この結果はテストステロン補充が前立腺癌に関して安全である事を示すが、確定するための前向きの研究が必要である。

    【 原著 】
    Urology. 2013 May 24.
    Use of Testosterone Replacement Therapy in the United States and Its Effect on Subsequent Prostate Cancer Outcomes.
    Kaplan AL, Hu JC.
    Department of Urology, David Geffen School of Medicine, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA.

    【 弊社コメント 】
    「傾向スコア」は、実験ができない場合(調査観察データなど)における交絡の調整方法です。潜在的な交絡要因となる様々な共変量を傾向スコアという一つの合成変数に縮約(一次元化)して、その傾向スコアを基準としてマッチングや層別化を行います。近年医療分野を中心にとても使われてきています(野)。

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  • ラット前立腺は血清テストステロンの低下に対して組織濃度を機能的レベルに維持するように働く

    2013年05月29日


    【 目的 】
    前立腺癌(PC)は加齢およびアンドロゲン依存性疾患である。加齢に伴うアンドロゲンレベルの低下とは逆説的に、PCのリスクは上昇する。全身性のアンドロゲンレベルとPCリスクの間に相関性はないが、全身性のアンドロゲンレベルは前立腺組織のアンドロゲンレベルを反映していない。転移性PCにおいて、ホルモン療法中のアンドロゲン生合成経路の変化は癌組織のアンドロゲンレベルを高め、アンドロゲン受容体(AR)シグナリングの持続の原因となっている。加齢に伴うアンドロゲンの低下と共に正常前立腺組織において同様の変化がおき腫瘍発生の原因となっている可能性がある。
    ラット前立腺が血清テストステロン(T)の低下にも関わらず組織濃度を機能的レベルに維持するか否かを検討した。

    【 方法 】
    ラットを去勢し、Tを去勢レベル、正常レベル、正常下限レベルおよび非生理的レベルに維持するカプセルを移植した。6週後にLC-MS/MSにて血清および前立腺のTおよびDHTを測定した。QRT-PCRにてアンドロゲン/ARシグナリングに関連する遺伝子の発現を測定した。

    【 結果 】

    • 有意に差異がある血清TおよびDHTレベルいにも関わらず、各群の前立腺のTおよびDHT濃度は同様であった。
    • 前立腺のアンドロゲン調整遺伝子の発現は全群で同様であり、ラット前立腺は、血清Tの低下にも拘らず機能的レベルのアンドロゲンを維持していた。

    【 結論 】
    テストステロンの低下はアンドロゲン生合成遺伝子の発現を有意に変えた。

    【 原著 】
    J Mol Endocrinol. 2013 May 24.
    Low systemic testosterone levels induce androgen maintenance in benign rat prostate tissue.
    Zhou Y, Otto-Duessel M, He M, Markel S, Synold T, Jones JO.

    Y Zhou, Molecular Pharmacology, City of Hope Beckman Research Institute, Duarte, United States.

    【 弊社コメント 】
    以前から言われていたと思いますが、アンドロゲン(男性ホルモン)のレベルは血清と前立腺組織では異なる事に加え、血清レベルが低下すれば前立腺組織だけはそれを維持しようと反応するという現象です。生殖能を維持しようとする仕組みかもしれません(野)。

    古来より前立腺癌に対するテストステロン悪玉説が指摘されて来ましたが、皮肉なことに、研究が進むほど「テストステロンの欠乏が前立腺癌の発症リスクにつながる」という機序が示唆されつつあります。
    テストステロンが多過ぎても、少な過ぎても、様々な健康リスクになることが判りつつあります。 そして、加齢で少な過ぎる分は、健康的な生活習慣(適度な食事と運動、睡眠)をベースに、それでも不足し過ぎない程度のテストステロンを少しずつ補充するのが最善と思うのです(福)。

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  • 低バイオアベイラブル・テストステロンおよび高SHBGは生検による前立腺癌検出リスクが4.9および3.2倍高い

    2012年11月30日


    【 目的 】
    近年の研究はテストステロン・レベルと前立腺癌(PC)の間に負の関係を示している。PC診断におけるホルモン・パターンの有用性に関しては異論が多い。そこで、ホルモンパターンとPCの関係およびPCリスク評価のホルモン・レベルのカットオフ値を検討した。

    【 方法 】
    2006年11月~2009年5月の間に前立腺生検を行った279例について遡及的解析を行った。前立腺生検の適応の指標は直腸診(DRE)の結果、あるいはPSAの上昇によるPCの疑いである。スクリーニングは5+5コア経直腸超音波ガイド前立腺生検で行った。年齢、前立腺容積、DRE(正常または異常)、生検所見(正常またはPC)、PSA、遊離型/総PSA比、PSA密度、テストステロン(T)およびSHBGを遡及的に調査した。遊離およびバイオアベイラブル・テストステロン(BT)はVermeulen’s formulaを用いて求めた。

    【 結果 】

    • 多変量解析において、DREの異常、SHBG levels ≥ 66.25 nmol/l、およびBT≤ 104 ng/dlが前立腺癌の診断と関係していた。オッズ比は各々 5.46, p < 0.001、3.27; 95%CI 1.52 to 7.04, p < 0.002、および4.92, 95% CI 1.78 to 13.59, p = 0.002であった。
    • 年齢、FT、PSA、T、PSA/T、PSA/FTおよびPSA/BTはPCの診断と関係していなかった。

    【 結論 】
    低バイオアベイラブル・テストステロンおよび高SHBGは生検による前立腺癌検出リスクが4.9および3.2倍高かった。この事実は前立腺癌リスクについてカウンセリングする患者さんの臨床的シナリオに有用である。

    【 原著 】
    Scand J Urol Nephrol. 2012 Nov 27.
    Higher sex hormone-binding globulin and lower bioavailable testosterone are related to prostate cancer detection on prostate biopsy.
    García-Cruz E, Carrión Puig A, García-Larrosa A, Sallent A, Castañeda-Argáiz R, Piqueras M, Ribal MJ, Leibar-Tamayo A, Romero-Otero J, Alcaraz A.
    Urology Department, Hospital Clínic Barcelona , Barcelona , Spain.

     

    (さらに…)

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  • アンドロゲン受容体GGC繰り返し多型と前立腺肥大症および前立腺癌リスク

    2012年11月29日


    【 目的 】
    アンドロゲン受容体(AR)のGGC繰り返し多型はアンドロゲン反応性遺伝子の転写活性に影響し、前立腺肥大症(BPH)および前立腺癌(PCa)のリスクを上げる。そこで、南ブラジルの男性集団におけるGGC繰り返し長、テストステロン・レベルおよびPCaおよびBPH発現リスクの間の関連性を検討した。

    【 方法 】
    PCa患者130例、BPH患者126例およびコントロール患者88例について検討した。DNAは白血球より抽出し、分画分析により解析した。ハザード比(HR)を測定した。

    【 結果 】

    • GGC平均長は3群間で差異がなかった。
    • GGC > 19の集団のPCa発現リスクはGGC ≤ 19群と比較したとき3.300 倍(95 %CI 1.385-7.874)高かった (p = 0.007)。
    • 総テストステロン<4 ng/mL群のPCaおよびBPH発現リスクは2.799倍 (95 % CI 1.362-5.754). (p = 0.005) および2.786倍 (95 % CI 1.470-5.280) (p = 0.002)高かった。
    • GGC > 19群の総テストステロンはGGC ≤ 19群より有意に低かった。

    【 結論 】
    アンドロゲン受容体のGGC繰り返し長の上昇はPCaおよびBPHリスクの上昇と関連し、低テストステロンもこれら疾患の発現リスクの上昇を示唆した。

    【 原著 】
    Mol Biol Rep. 2012 Nov 27.
    Androgen receptor GGC polymorphism and testosterone levels associated with high risk of prostate cancer and benign prostatic hyperplasia.
    Biolchi V, Neto BS, Pianta DB, Koff WJ, Berger M, Brum IS.
    Department of Physiology, Universidade Federal do Rio Grande do Sul, Porto Alegre/RS, Brazil

    【 弊社コメント 】
    疾病の有無の3群間で比較するとGGC繰り返し長に差がないが、GGC繰り返し長で分けてみるとPCaおよびBPHリスクに差があるという、一見しては理解しずらいところもあります。 テストステロン感受性の面からみれば理解できます。 これまでCGA多型について多数報告がありましたがGGC繰り返し長という切り口は初めてです。(野)

    低過ぎるテストステロン状態」が前立腺肥大症や前立腺癌のリスクを高める、という機序の一端が示されました。(福)

     

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  • テストステロンはメタボリックシンドロームによる前立腺の変化を防止する

    2011年11月16日


    【 目 的 】
    メタボリックシンドローム(MS)は、しばしばBPH/LUTS
    と関連している。これらの共通の疾患として性腺機能低下症がある。しかし、テストステロン補充は前立腺に対する副作用のため制限がある。
    そこで、MSに関連した前立腺の変化がT補充により防禦されるか否かを検討した。

    【 方 法 】
    高脂肪食(HFD)で12週間飼育した雄性ラットをMSの動物モデルとして用いた。HFDウサギに対してテストステロンまたはファルセノイド受容体XアゴニストINT-747を投与した。正常食で飼育したウサギをコントロールとして用いた。

    【 結 果 】

    • HFDウサギは性腺機能低下症を発現し、MS症状の全て、高脂血症、耐糖能低下、脂質異常、高血圧、内臓肥満を呈した。加えて前立腺の炎症を示した。
    • 免疫組織学的分析で、HFDによる前立腺の繊維化、低酸素血症および炎症の誘発が認められた。
    • HFDウサギの前立腺において、催炎症物質(IL-8,
      IL-6, IL-1β, TNFα)、Tリンパ球(CD4, CD8, Tbet, Gata3, ROR γt), マクロファージ(TLR2, TLR4,
      STAMP2), 好中球(lactoferrin), 炎症(COX2, RAGE), および fibrosis/myofibroblast
      activation(TGFβ, SM22-α, α-SMA, RhoA, ROCK1/ROCK2)に関わるマーカー
      のmRNAの発現が有意に上昇していた。
    • テストステロンはINT747と同様に幾つかのMS症状を防止したが、全てのHFDによる前立腺変化を正常化したのはテストステロンだけであった。
    • 興味あることに、テストステロンとエストラジオールの比は繊維化および炎症マーカーとの有意なネガティブな関連を示した。

    【 結 論 】
    この結果は、テストステロンがBPH/LUTSの発現に繋がるメタボリック・シンドロームによる前立腺の繊維化、低酸素血症および炎症を防止することを示している。

    【 原 著 】
    J Endocrinol. 2011 Oct 18.
    Testosterone protects from
    metabolic syndrome-associated prostate inflammation: an experimental study
    in rabbit.

    Vignozzi L, Morelli A, Sarchielli E, Comeglio P, Filippi S, Cellai
    I, Maneschi E, Gacci M, Serni S, Carini M, Piccinni MP, Saad F, Adorini L,
    Vannelli GB, Maggi M.
    L Vignozzi, Sexual Medicine and Andrology Unit,
    University of Florence, Florence, Italy.

    【  弊社コメント 】
    テストステロンの多様な作用が動物実験レベルで機序的に解明されつつあります。(野)

    メタボリック・シンドロームが前立腺疾患の原因となる一方、テストステロンの補充が予防や回復に役立つ可能性が示唆されます。(福)

    【 弊社注釈 】

    Farnesoid
    X
    receptor (FXR)

    胆汁酸を生理的リガンドとし、胆汁酸代謝制御に重要な役割を果たすと考えられている核内受容体型転写因子。 近年、胆汁酸トランスポーターの発現や肝細胞における胆汁酸合成調節(律速酵素Cyp7α1)に関与していることが明らかにされており、FXRの胆汁うっ滞性疾患への関与やFXR分子機構に基づく創薬の可能性が注目されている。

    INT-747
    胆汁酸をリガンドとする核内レセプターであるFXR(Farnesoid
    X receptor)への作動薬(*3)であり、肝臓内での胆汁酸増加に伴う細胞毒性や肝線維化に対する治療効果が期待されます。Intercept 社は本剤を、PBC
    の適応取得を目指して欧米で第Ⅲ相臨床試験準備中であり、世界初のNASH
    の適応取得を目指して米国で後期第Ⅱ相臨床試験をこのほど開始しました。また、門脈圧亢進症については米国で第Ⅱ相臨床試験準備中の段階にあります。なお、NASH
    に対する後期第Ⅱ相臨床試験は、米国NIH(米国国立衛生研究所)によって実施中です。

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  • 低テストステロンは前立腺癌に局在するグリソンパターン4の高頻度と関連している

    2011年09月07日


    【 目 的 】
    術前のテストステロン値とグリソンスコアおよび優勢型による前立腺癌の悪性度との関連性を検討した。

    【 方 法 】
    2007年1月から2011年1月の間に前立腺切除のため受診した患者の、術前の血清総テストステロンを測定した。グリソンスコアおよびグリソンパターンを前立腺生検および前立腺組織標本にて判定した。試験はプロスペクティブに行い、登録症例数は431例である。

    【 結 果 】

    • 生検において、グリソンパターン4は72例(17%)に認められた。
    • 前立腺標本において、グリソンパターン4は132例(31%)に認められた。
    • グリソンパターン4の132例の総テストステロンはグリソンパターン3の299例より有意に低かった(4.00
      vs 4.50 ng/ml, p = 0.001)。
      また、PSAは高く (8.4 vs 6.6 ng/ml, p <0.00001),
      前立腺外への伸張およびポジティブな範囲が目立った(49% vs 20% and 23% vs 14%, p<0.000001 and
      0.02, respectively)。
    • 総テストステロンが3.0 ng/ml以下の62例は高いBMI (mean 0.5 kg/m(2), p<0.000001)を伴い、より大きかった(mean 7 kg, p = 0.0001)。
      これらの群ではグリソンパターン4の比率が高かった(47% vs
      28%, p =
      0.002)。

    【 結 論 】
    低テストステロンは進行型前立腺癌を示すグリソンパターン4の高比率と関連していた。腫瘍の進行度は生検では正確に推定できない。術前のテストステロン値は前立腺癌の管理の改善のためPSA測定に加えられるべきである。

    【 原 著 】
    J Urol. 2011 Aug 17.
    High Incidence of Predominant
    Gleason Pattern 4 Localized Prostate Cancer is Associated With Low Serum
    Testosterone.

    Botto H, Neuzillet Y, Lebret T, Camparo P, Molinie V, Raynaud
    JP.
    Department of Urology, Foch Hospital, Suresnes, France.

    【 弊社注釈 】 グリソン・パターンの定義

    前立腺癌の形態は「グリソンパターン (グリソン分類)」として次の5つに分類されており、また悪性度(俗に言う「癌細胞の顔つき」)は、国際的にグリソンスコアで表現されています。

    Gleason
    pattern 1

    均一で独立した中型腺管が密在し、明瞭な結節を作る。

    Gleason pattern 2

    上記と同様の結節が認められるが、部分的な最小限の浸潤傾向、やや低い腺管密在性、軽度の大小不同が見られる。

    Gleason pattern 3

    明瞭な管腔を有する独立腺管よりなる。pattern
    1,2と異なり既存の非腫瘍性腺管の間に浸潤する。腺管は概して小型であるが中型~大型のこともありうる。篩状腺管は小型で境界が完全に平滑なものが含まれるが、ごく稀である。

    Gleason
    pattern 4

    癒合腺管、篩状腺管、hypernehromatoid、不明瞭な腺管形成を示すもの

    Gleason pattern 5

    充実性、索状、孤在性、面疱状壊死

    【 弊社コメント 】
    進行度の高い前立腺癌の人は、テストステロン値が有意に低いとのことですが、前立腺癌の進行がテストステロンを低くするのか、それともテストステロン分泌の低い状態が前立腺癌の進行度を高めてしまうのでしょうか?興味は尽きません。(福)

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  • 低テストステロン患者は前立腺癌リスクが高い

    2011年01月25日


    【 目的 】
    前立腺癌リスクの予測におけるテストステロンの役割、およびその高グリソン・スコアとの関連性を、前立腺生検を行った患者において検討した。

    【 方法 】
    対象は前立腺生検を行った568例の患者。患者をテストステロン3.85
    ng/mlを境に高テストステロン群(n=285、高T群)
    および低テストステロン群(n=283、低T群)に分けた。
    多変量回帰分析により、年齢、前立腺容積、PSA、およびPSADの影響、および前立腺癌リスクおよび高グリソン・スコアに対するテストステロンの影響を調査した。

    【 結果 】

    • 低T群は高T群に比して前立腺癌の発症率が有意に高かった(38.9%
      vs. 29.5%, p=0.018)。
    • 前立腺癌のリスクの上昇に関連する因子は年齢([OR]=1.08, 95%
      [CI]=1.25-3.16,p=0.001), 高PSA(OR=3.35, 95% CI=2.63-4.25, p=0.001),
      低前立腺容積(OR=0.183,95% CI=0.11-0.30, p=0.001), および低テストステロン(OR=1.99,
      95%CI=1.25-3.16, p=0.001)であった。
    • PSAのみが高グレード前立腺癌(グリソン・スコア≧7)の強い予測因子であった(OR=2.19, 95% CI=1.57-2.95,
      p=0.001)。

    【 結論 】
    低テストステロンの患者は高テストステロンの患者よりも前立腺癌のリスクが高い。低テストステロンは前立腺癌リスクの予測因子であるが、高グレード前立腺癌へのリスクの上昇とは関連がない。

    【 原著 】
    Korean J Urol. 2010 Dec;51(12):819-23. Epub 2010 Dec 21.
    Is a decreased serum
    testosterone level a risk factor for prostate cancer? A cohort study of
    korean men.

    Shin BS, Hwang EC, Im CM, Kim SO, Jung SI, Kang TW, Kwon DD, Park
    K, Ryu SB.
    Department of Urology, Chonnam National University Medical School,
    Gwangju, Korea.

    【 弊社コメント 】
    テストステロンが多過ぎると前立腺癌になるのでは?」ひいては「男性ホルモン剤を投与すると前立腺癌になるのでは?」という指摘は、今や古い迷信になりつつあり、むしろテストステロンの分泌不足が前立腺癌のリスク要因と考えざるを得ない検討結果が出揃いつつあります。

    前立腺癌は10~20年かけて進行するとはいえ、加齢にともない特に50歳代から発症する人が多くなる一方、テストステロンの分泌が旺盛な20歳代では極めて少ないわけですから、テストステロンが多過ぎることよりも、40歳前後の頃からテストステロンの分泌が衰え「テストステロンの不足」になることが発症の原因と考える方が自然ではないでしょうか。発症してから顕在化するまで10~20年かかるという話にも符合すると思います。

    そうなりますと、自ずと30歳代・40歳代にかけてテストステロンが不足しないような生活習慣(バランスの取れた食生活・適度な運動・ストレスの発散)を維持することがますます重要となり、それでも加齢にともないテストステロンの分泌が低下する状況に対しては、早めに生理的範囲のテストステロン補充をする事こそ「前立腺癌の予防」になるのではないかと考えられ、今後の検討が期待されます。(福)

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  • フィナステリドの併用はテストステロン・アンデカノエイトの薬物動態に影響しない

    2010年10月27日


    【 目的 】
    経口テストステロン・アンデカノエイト(TU)はテストステロン欠乏症の治療に用いられているが、経口TUはdihydrotestosterone
    (DHT)を上げる。DHTはにきび、男性型禿頭および前立腺過形成

    のリスク上昇と関連していると考えられている。
    他の経口テストステロン製剤と5αリダクターゼ阻害剤の併用投与はDHTの産生を抑制し血清テストステロン濃度を上げる。
    フィナステリドは経口TU投与中、血清テストステロンを上げ、DHTを下げると仮定した。そこで経口TUの定常状態の薬物動態に及ぼすフィナステリドの影響を検討した。

    【 方法 】

    験的に性腺機能低下を誘発した若年男性11名を対象にオープンラベルのクロスオーバー試験を行った。すなわち、テストステロン200mgの経口TUを1日
    2回7日間投与の定常状態の薬物動態をフィナステリド非併用下、フィナステリド0.5mgおよび1mg経口1日2回各併用下にて測定した。
    各投与の7日目に血清テストステロン、DHTおよびエストラジオールをベースラインおよび朝の投与後1,
    2, 4, 8, 12, 13, 14, 16, 20 および
    24h後に測定した。

    【 結果 】

    • 血清テストステロンおよびDHTは全ての投与群で有意に正常範囲を超えて上昇した。
    • フィナステリド0.5mgおよび1mg経口1日2回各併用は血清テストステロンおよびDHTのどちらにも影響しなかった。

    【 結論 】
    5αリダクターゼ阻害剤併用の影響は他の経口テストステロン製剤と経口テストステロン・アンデカノエイト製剤とでは異なる。おそらく、TUのリンパ系をを介したユニークな吸収経路のためではないかと思われる。

    【 原著 】
    Int J Androl. 2010 Oct 24. doi: 10.1111/j.1365-2605.2010.01120.x.

    Steady-state pharmacokinetics of oral testosterone
    undecanoate with concomitant inhibition of 5α-reductase by
    finasteride.

    Roth MY, Dudley RE, Hull L, Leung A, Christenson P, Wang C,
    Swerdloff R, Amory JK.
    Population Center for Research in Human
    Reproduction and Department of Medicine, University of Washington, Seattle,
    USA.

    【 弊社コメント 】
    この報告ではフィナステリドの影響はありませんでした、その理由がここで述べられているよ
    うに吸収経路の違いだけによるものか、実験条件の違いによるものか分かりません。しかし、フィナステリドの併用が必ずテストステロンを上げるものではない
    という事は分かりました。(野)

    TU(testosterone
    undecanoate:テストステロン・アンデカノエイト)は、Andriol(アンドリオール:本邦では未承認)という男性ホルモンの経口製剤の有効
    成分で、腸からリンパ系を通じて吸収されるため、肝臓のファーストパスを受けずに男性ホルモンの血中濃度を上昇させられるのが特徴ですが、欧米人に比べて
    脂質が少ない食生活の日本人には相性が悪く、肝心な男性ホルモンの血中濃度がなかなか上昇しないせいか、本邦での承認をはじめ、日本で今ひとつ臨床応用が
    盛り上がらない様子です。
    これまで、フィナステリド(プロペシアの有効成分)をテストステロン製剤と併用したとき、テストステロンの血中濃度を
    (併用しない時よりも)上昇させるという指摘がありました。これは、フィナステリドが5α還元酵素(リアクターゼ)を阻害するため、DHTに変わらない分
    のテストステロンが、そのまま血中濃度を上昇させるぶん、併用しない時よりも高くなるものと考えていました。本報の著者は今回の結果の理由として吸収経路
    の違いを指摘していますが、今ひとつ腑に落ちないのが小生の印象です。(福)

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