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動脈硬化形成に対するアンドロゲンの影響

2012年12月03日


【 目的 】
男性の低テストステロンは心血管疾患と関連している。臨床試験はテストステロン補充(TRT)が心血管疾患の症状を改善し、動脈硬化形成の原因となる炎症を低下することを示している。 動物モデルにおいて、動脈硬化形成に対する有用な効果の一部である血管性炎症メディエイターに対するテストステロンの影響を検討した。

【 方法 】
低内因性テストステロンおよび非機能アンドロゲン受容体(AR)を呈する睾丸性女性化マウス(TFM)を用いアンドロゲン状況の動脈硬化形成、血清脂質、および炎症メディエイターに体する影響を検討した。TMFは高コレステロール食で飼育し、生理学的TRTまたは生食水の投与を行い、生殖投与XY同胞マウスと比較した。

【 結果 】

  • 高コレステロール食28週飼育はXY同胞およびTMFマウスの大動脈起始部における脂肪線条形成を起こし、この効果はTMFマウスにおいて有意に増強されていた。
  • 正常食のTFMマウスはXY同胞に比してTFN-αおよびIL-6の上昇を示した。
  • 高コレステロール食はTFMマウスのMCP-1およびXY同胞のTFN-αおよびMCP-1の上昇を誘発した。
  • TRTはTFMマウスの脂肪線条形成および血清IL-6を減少したが、血清脂質には影響しなかった。
  • 単球/マクロファージ染色の結果、全マウスにおいて大動脈起始部脂肪線条部分に局所性炎症を認め、TRTはTFMマウスにおいてプラークの減少とともに局所性炎症を低下した。
  • Fractalkine (CX(3)CL1) およびその受容体(CX(3)CR1)はアンドロゲン状態とは独立して高コレステロール食の全マウスの脂肪線条に存在した。

【 結論 】
この結果は粥腫防御におけるテストステロンのアンドロゲン受容体依存性および非依存性の抗炎症作用を示している。 しかし局所性炎症に関わるテストステロンの機序は不明である。

【 原著 】
Endocr Res. 2012 Nov 20.
Effect of Testosterone on Inflammatory Markers in the Development of Early Atherogenesis in the Testicular-Feminized Mouse Model.
Kelly DM, Sellers DJ, Woodroofe MN, Jones TH, Channer KS.
Biomedical Research Centre, Sheffield Hallam University , Sheffield , UK.

 

【 弊社コメント 】
男性の低テストステロン状態が動脈硬化、ひいては心血管疾患のリスクであり、テストステロン補充が動脈硬化形成の原因となる炎症を低下し、心血管疾患の症状を改善することは既に知られていますが、その機序が本報のような基礎実験により解明されつつあります。(福)

動脈硬化巣の形成
発症には炎症が関与し,その過程においてはinterleukin-6(IL-6)やmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)などのサイトカインの発現が重要な働きをしている。

interleukin-6(IL-6)
血中IL-6はCRPに先行して早期に上昇し,速やかに消退するという変動様式を示し,CRPよりも炎症状態をより鋭敏に反映すると言われている。IL-6はCRPの産生以外にも,マクロファージにおける組織因子やマトリックス分解酵素(MMPs)の産生,血小板の凝集,内皮細胞における接着分子や各種サイトカインの発現,血管平滑筋細胞の増殖などを促進し,動脈硬化性病変の形成やプラーク破綻に関与する。

Monocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)
単球の遊走をきたすサイトカイン(ケモカイン)であり,単球の内皮細胞への接着,内皮下への侵入を促進するとともに,単球を活性化して組織因子や種々のサイトカインの発現をきたす。 動脈硬化巣のマクロファージ,平滑筋細胞,内皮細胞においてはMCP-1の発現亢進が認められる。 急性心筋梗塞患者では血中MCP-1値が上昇する。不安定狭心症患者においても,入院時の血中MCP-1値は健常者や安定狭心症患者に比べ有意に高い。

fractalkine
慢性炎症病変に多くみられるT細胞や単球の,遊走および接着に関与するケモカインである。

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