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高いテストステロン・レベルは損害を招く高いリスクに対する積極性と関連する
【 目 的 】
性ステロイド・レベルと心拍数変動(HRV)の関係を調査した。【 方 法 】
対象は心機能検査のため受診した男性114例(平均年齢(46.6±11.3)。 LH、総テストステロン(TT)、遊離テストステロン、エストラジオール(E2)およびDHEA-Sの測定を行った。 HRVは24時間ホルター心電計により測定した。 性ステロイド・レベルとHRVの関連性を3段階の年齢群別(20-39
; 40-59 ; >60 )に解析した。【 結 果 】
- 被験者全員が正常な生化学的検査値あであり、3年齢群は同様な身体計測値であった。
- 性ステロイドは、DHEA-Sのみが年齢群間で有意な差があり(p=0.026)、
加齢とともに低下していた。 - HRVの解析において、全副交感神経活性は年齢とともに低下したが ( HFn, pNN50, および rMSDD:
p=0.001, p=0.000, and p=0.000 )、交感神経活性の中でLF/HFのみは年齢と共に上昇した(p=0.000)。 - 年齢およびウェスト周囲径をコントロールした部分相関分析において、TTおよびDHEA-SはHFn(副交感神経因子)とポジティブに相関し、交感神経パラメータであるLF/HF24時間および総交感神経指数(GSI)とネガティブに相関した。
- 血清E2は副交感神経パラメータrMSSDとネガティブに相関し、LF/HF24時間および総交感神経指数とポジティブに相関した。
- 性ステロイドの中でDHEA-Sが最も自律神経機能パラメータと相関していた。
【 結 論 】
男性において、身体計測値とは独立して、アンドロゲンと副交感神経活性およびエストラジオールと交感神経活性はポジティブに相関していた。【 原 著 】
Turk Kardiyol Dern Ars. 2010 Oct;38(7):459-65.
The relationship between serum sex steroid levels and heart rate variability parameters in males and the effect of age.
Doğru MT, Başar MM, Yuvanç E, Simşek V, Sahin O.
Department of Cardiology, Medicine Faculty of Kırıkkale University, Kırıkkale, Turkey.【 弊社注釈 】
心拍数変動
糖尿病では自律神経の障害がよくみられることが知られており、下痢や便秘を繰り返す、立ちくらみが起きる、といったことが見られます。
心臓は規則正しく脈を打っていますが、この心拍には健康な方でもゆらぎがあり、心拍数変動と呼びます。
心拍数変動は自律神経の障害があると少なくなるため、心電図の検査を利用してこの心拍数変動を測定し自律神経の機能の障害を調べることが出来ます。 この検査がR-R間隔検査(心拍数変動検査)です。- MeanNN (NN間隔平均)
テスト期間中の全拍動間隔値を平均したもの。 NN平均値は、1/1000秒単位で測定される。
- SDNN (NN間隔標準偏差値)
NN間の標準偏差であり、NN間隔の分散の平方根である。
- RMS-SD (隣接NN間隔標準偏差)
連続して隣接するNN間隔の標準偏差で、隣接NN間隔の分散の平均の平方根である。
これは、短時間NN間隔記録における心拍の高周波帯における変動、つまり副交感神経系による心臓の調節機能を判断するものである。- pNN50 (隣接するNN間隔の差が50msを超える比率)
- LF(低周波)
0.004~0.15Hzの周波数帯のパワースペクトル。 この値は、交感神経と副交感神経の両方の活動を反映する。 これは、一般的に長時間記録における交感神経活動を示す強力な指標である。
この周波数帯に対する副交感神経の影響は、呼吸数が1分間に9回(周波数0.15Hz)以下の深呼吸をしている間LFに現れる。- HF(高周波)
0.15~0.4Hzの周波帯のパワースペクトル。 この値は、副交感神経(迷走神経)の活動を反映する。
- LF/HF比
LF(低周波)とHF(高周波)のパワーの比率。 この値は、交感神経と副交感神経の全体のバランスを表す。 数値が高いと交感神経優位を、低い場合は副交感神経優位を示す。
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アンドロゲン補充療法は軽度のBPH(前立腺肥大症)を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状を改善する
【 目 的 】
前立腺肥大症(BPH)を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状(LUTS)に対するアンドロゲン補充療法(ART)の効果に関する無作為コンロール試験を行った。【 方 法 】
性腺機能低下症およびBPHを合併する52例をエナント酸テストステロン250mg/4週、筋注によるART群または未治療のコントロール群に無作為に割り付けた。
開始前および治療12カ月後のIPSS(国際前立腺症状スコア)、尿流量測定データ、排尿後の残尿量(PVR)および全身の筋肉量を比較した。【 結 果 】
- 解析対象となったのはART群23例、コントロール群23例の計46例である。
- 12カ月後、IPSSはART群では開始時に比して有意に低下した( 15.7 ± 8.7 vs. 12.5 ± 9.5; p < 0.05 )が、コントロール群では有意な変化はみられなかった。
- ART群は最大尿流率および排尿量の有意な改善を示したが、コントロール群では有意な改善は見られなかった。
- PVRは両群で有意な変化がみられなかった。
- ART群は平均筋肉量の有意な増加を示したが(p < 0.05)、コントロール群では有意な変化が見られなかった。
【 結 論 】
アンドロゲン補充療法は軽度の前立腺肥大症を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状を改善した。【 原 著 】
Aging Male. 2010 Dec 21.
Androgen replacement therapy
contributes to improving lower urinary tract symptoms in patients with
hypogonadism and benign prostate hypertrophy: a randomised controlled
study.
Shigehara K, Sugimoto K, Konaka H, Iijima M, Fukushima M, Maeda Y,
Mizokami A, Koh E, Origasa H, Iwamoto T, Namiki M.
Department of
Integrative Cancer Therapy and Urology, Kanazawa University Graduate School
of Medical Science, Kanazawa, Ishikawa, Japan.【 弊社注釈 】 (リンク先: 参照資料)
「下部尿路症状 (Lower Urinary Tract Symptoms: LUTS)」
下部尿路機能障害による排尿障害からの排尿症状と蓄尿障害からの蓄尿症状を併せたものです。下記の「排尿障害」と「蓄尿障害」は、下部尿路症状(LUTS)の一部分となります。
「排尿障害」
排尿症状は尿をスムースに出せない症状で、排尿困難・排尿開始遅延・腹圧性排尿など。「蓄尿障害」
蓄尿症状は、尿をうまく溜められない症状で、頻尿・尿意切迫感・尿失禁など。【 弊社コメント 】
一般に、前立腺肥大症に対して男性ホルモンは症状を促進させると言われていることから、特に重症の前立腺肥大症の男性には男性ホルモンの補充をお勧めしておりませんが、軽症の人であれば、本報によると1年のテストステロン補充で有意に下部尿路症状が改善したことから、安心して男性ホルモンの補充が出来るものと期待されます。
なお、グローミンによる男性ホルモンの補充でも、下部尿路症状を改善することが報告されています。
男性ホルモンの分泌不足が排尿や蓄尿をコントロールする筋肉量の低下を招き、下部尿路症状を起こしていたとすれば、テストステロンの補充でこれらの筋肉を取り戻すことにより、症状が改善したのかも知れません。 (福)続きを読む