【目的】
アンドロゲン低下男性における心血管イベントとリスク因子に対するテストステロン使用の影響について、無作為試験のシステマチック・レビューおよびメタ解析を行った。
【方法】
収集データベース:
MEDLINE (1966 to October 2004), EMBASE (1988 to October 2004), および Cochrane CENTRAL (inception to October 2004)
対象としたトライアル:
テストステロンと対照としてプラセボーを用いた無作為試験で、心血管リスク因子(脂質分画、血圧、血糖)、心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、狭心症、跛行、血管再開通術、卒中)および心血管の代理エンドポイント(心あるいは血管疾患を示す臨床検査値)の評価を行ったもの。
【結果】
- 解析対象となったのは30トライアル、1642例。うち808例がテストステロン投与。
- 低テストステロン男性に対するテストステロンの使用は血圧、血糖および脂質に影響を殆ど影響しなかった。低-正常および正常テストステロン男性でも同様の結果であった。
- テストステロン使用と全心血管イベント(n=6)の間のORは1.82 (95% CI, 0.78 to 4.23)であった。
【結論】
現在のエビデンスでは、「男性におけるテストステロン使用は重要な効果を心血管に及ぼさない」という推測がわずかに支持される。
テストステロンの長期使用に関する安全性を確立するためには、心血管疾患のリスクに対する大規模な無作為試験が必要である。
【原著】
Testosterone and cardiovascular risk in men: a systematic review and meta-analysis of randomized placebo-controlled trials.
Haddad RM, Mayo Clin Proc. 2007 Jan;82(1):29-39. Links
Knowledge and Encounter Research Unit, Mayo Clinic College of Medicine, Rochester, Minn 55905, USA.
【弊社コメント】
LOH男性の治療法やアンチ・エイジングに対するテストステロン補充療法の将来に向け、リスクとメリットの検証が世界的なトレンドになっているようです。
そのような中で、先ずはこれまでの様々な研究発表を振り返って再解析する試みがなされているようで、本報のメタ解析はこのような背景によるものと思われます。
本報の結果からは、悪い効果も良い効果のいずれも認められておらず、少なくとも、現状ではテストステロンの補充が心血管に悪い影響を及ぼす事は認められていません。
これまでの研究結果では、試験の規模とバラツキ等から明確な結論が出せない、というのが現状のようです。(野)
テストステロンが低過ぎると心血管リスクが高まるのは間違いなさそうですが、では「テストステロンを投与すれば心血管リスクを予防できるのか?」というと、本報の検討では残念ながらハッキリしませんでした。改めて多くの症例で大規模な研究を行う必要があるようです。
心血管の疾患に影響する因子は多々あるでしょうから、テストステロンの投与だけの影響を抽出するためには、自ずと多くの症例を集めて長期間にわたる調査を行い、統計解析の結果をより正確にさせる必要があると思われます。(福)